NEWVERYは、今年度から高等教育機関を対象に「就学就職ギャップ埋めます」プログラムの提供を開始しました。
このプログラムは、IT、メディア、音楽、ゲーム、マンガ、アニメ、アート等、イノベーションにより大きな変化が起こった事業分野を対象に、産業界の現在の姿を高校生に伝え、正しい大学進路選択とキャリア形成を支援するものです。
第1弾として、2017年6月18日(日)、スマートフォン向けゲームの開発・運営を行うGAMKIN株式会社代表取締役・沖永賢吾氏の講演プログラムを、宝塚大学東京メディア芸術学部(東京都新宿区)のオープンキャンパス内にて実施しました。
以下、イベントレポートをどうぞ。
突然ですが、2017年の中高生がなりたい職業ランキング、中学生・高校生(男子)に共通してTOP3に入っている職業は何だと思いますか?
プロスポーツ選手や公務員、運転手を差し置いてランクインした職業……
それはずばり「ゲームクリエイター」です。(2017年3月ソニー生命保険株式会社調べ)
女子中学生のなりたい職業ランキングでも7位に入っているところを見ると、今の中高生がいかにゲームに親しみ、長く関わりたいと考えているかがわかります。
でも、ゲームクリエイターってどうやってなるの?
どんな勉強をすればいいの? 特殊な才能が必要?
そう思っている子どもたち、そして大人も、実は多いのではないでしょうか。
そんな疑問にひとつの回答案を示すべく、宝塚大学東京メディア芸術学部オープンキャンパスにて、GAMKIN(株)代表取締役・沖永賢吾氏の講演が行われました。
異彩のゲームクリエイター・沖永賢吾とは
GAMKIN(株)は、スマートフォン向けゲームの開発・運営を行う会社で、2013年に設立されました。熟練のゲームクリエイターたちが集い、設立数年で東京ゲームショウへの出展、そして自社ゲームの世界160カ国への配信を果たしています。そんな破竹の勢いのゲーム会社を作り、代表兼ゲームクリエイターを務めているのが沖永氏です。
沖永氏は最初からゲームクリエイターとしてキャリアをスタートした訳ではありませんでした。ゲーム制作を夢見ながらも、大学卒業後10年間、経営管理職に従事。非クリエイターとしてキャリアを磨き上げた末に、その経験を生かしてゲーム会社を立ち上げ、念願のゲームクリエイターになったという異色の経歴の持ち主です。
講演のタイトルは「業界人になったキミはそれでも道をあきらめない?」。
ゲームクリエイターになるには、朝から晩までゲーム漬けで、ゲーム以外は何も知らず、最初からクリエイター職として選ばれる以外の道はない……。
そんなステレオタイプを鮮やかに打ち破る沖永氏の経歴とキャリア観を聞きに、雨にもかかわらず多くの高校生と保護者が集まりました。
自分にとってゲームとは何か
登壇した沖永氏は、簡単な自己紹介の後、高校生たちにこう問いかけます。
「まず“君にとってゲームとは何ものなのか?”を考えてみよう。
ここがブレると何をしたかったのかわからなくなり、大学入学、進学、就職にあたって迷ってしまう」
続いて自身とゲームとの関係性を振り返ります。
初めに<幼少期>。
ゲームに夢中だった小学生時代。親にゲームを禁止され、ファミコンのある友人の家に転がり込んではゲームをする中で、礼儀作法や楽しくプレイするためのルールが身についたと言います。
中学生のころ初めてゲームで泣くほど感動する作品と出会い、五感を使いながらこんなに人を感動させられるものがあるんだ!とゲームクリエイターを目指すように。ところが親の大反対にあいます。「お前はバカか」。
コミュニケーションを生むゲーム、ビジネスとしての可能性
次に<青年期>。
大学進学のために上京した沖永氏、当時流行の兆しを見せつつあったPCのオンラインゲームにハマります。3〜4年間は、大学とコンビニと自宅のアパートを往復するのみ。授業以外の時間をすべてプレイに費やしていました。
自分の分身であるキャラクターがバーチャルワールドで冒険したり闘ったりする作品で、そこでも多くの出会いがあったと振り返ります。
就活の相談に乗ってもらったり、上手くいかず落ち込んでいると励まされたり……豊かなコミュニケーションを享受すると同時に、ゲーム内の課金の仕組みや、市場の形成の方法もプレイする中で学びました。
これらの経験から、人を巻き込み、楽しみながらお金が生まれるビジネスとしてのゲームの可能性にますます魅了されていきます。
ゲーム業界で唯一のキャリア
そして<壮年期>。
無事に大学を現役で卒業し、ゲームクリエイターを目指して就職活動をスタートした沖永氏ですが、企画書の書き方もわからず苦戦。とにかくまずはゲーム業界に入ることだ!と(株)カプコンの営業管理部門に入社します。
アミューズメント施設の営業管理を任され、真面目に働きながら、ゲームクリエイターへの転身を虎視眈々と狙っていました。ところが上司に胸の内を明かすとまたもや「バカか」。
クリエイター職と営業職では入り口が違うから無理だと諭されます。
現実を突きつけられた沖永氏。その後、転職のたびにゲームクリエイターに挑戦すれど叶わず、ゲーム業界内で広報宣伝、人事総務、オンラインゲーム事業立ち上げなど、バックオフィスとしてキャリアを重ねました。
そして最後に入ったソーシャルゲーム会社グリー(株)では管理部門で企業買収に携わります。上場企業で経営に関わりつつも、やはりゲームクリエイターへの夢を諦められなかった沖永氏は、同僚に「ゲームを作りたい。一緒にやろう」。
同僚は2つ返事で承諾、退社の翌日にGAMKIN(株)が誕生します。自力で夢を叶えた瞬間でした。
信念=今の心を信じること
半生を振り返って沖永氏はこう言います。
「自分にとってゲームは信念そのもの。そして信念とは人生から生まれるもの」
沖永氏の作ったGAMKIN(株)のミッションは、「ゲームというコミュニケーションを通じて仲間と共に語り、作り、遊び、学びながら、新しい社会や文化を創造する」。それはまさに沖永氏の半生そのものを表しているようです。
そして、高校生へのメッセージとして、ゲーム、アニメ、漫画……いま自分に目指したいことがあるとして、それは自分にとって何なのか? をぜひ問うてみてほしいと訴えます。
「たとえ16歳や17歳でもこれまでに生きてきた道があるはず。その中で出会い、感じたものを大切にして進むべき道を考えてほしい」
周囲に反対され、バカか、と言われながらも夢を諦めなかった沖永氏。それはゲームというたった一つの信念を愚直に貫いたからに違いありません。
講演はこんな印象的な言葉で締めくくられました。
「信念は“今の心を信じる”と書きます。
皆さんの信念はどうですか? 今の心を信じられますか?
それをずっと続けられれば信念になる。しっかり考えて信念を作っていってください」
高校生からは
熱心に聞いていた高校生からはこんな質問が。
「自分はゲームが好きで、プログラマーになりたいけど、同じくらい歴史も好き。ゲームを極める前に歴史を極めてからゲームに行きたいと考えています。どう思いますか?」
沖永氏の答えは明快でした。
「ゲームのプログラマーはいろんなことを知らないといけない。企画もしないといけないんです。世の中のことを知っていれば知っているほど人の心に訴えられる。歴史の知識を持っていることはゲームプランナーにとって強みこそなれ、デメリットになることはありません」
参加した別の高校生は、
「ゲームが好きで、企画に携わりたい。ゲーム制作の第一線で活躍している人の話を聞く機会なんて滅多にないので、とてもタメになりました。今日は来てよかった」と興奮気味に話していました。
高校生にとって、これからどんな進路を選ぶかは人それぞれ。でも、就学・就職の先に、沖永氏のようなキャリアだってありなんだよ、キャリアは自分が信念で切り開くものなんだよというメッセージは、大きな励みになったのではないでしょうか。
プログラム第2弾は7月4日(火)。
宝塚大学東京メディア芸術学部(東京都新宿区)にて高校教員を対象に『高大接続共創フォーラム』が開催され、NEWVERY理事・倉部史記による基調講演が行われます。
フォーラムのテーマはずばり「クリエイター志望は不安定な進路選択なのか?」。
「クリエイターになりたい」と生徒に相談されたとき、「バカか」ではなく、クリエイター職の未来像を見据えつつ助言・応援ができる進路指導に向けたお話です。
詳細はこちらをご覧ください。